大嫌い:02

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おまけ

    黙ってしまった学生2人を置き去りにして、こっちの2人はとっとと出てきた。
    自主的に訓練を積むつもりで来た者を、つい…本気になってしまったこちらの所為で居心地悪く、追い出してしまうのは違う…と感じたから。
「…ところで、相原君?」
    廊下の端まで来て、それまで黙っていた南部が口を開いた。
「ホントは、しっかり知ってましたね?プログラムNo.…」
「うん、勿論」
問われて、あっさり答えてしまう相原である。
    …それは、そうだろう。 6桁の数字…という事はつまり、100万分の1の確率という事だ。 全く在り得ないとは言わないが、如何にも偶然が過ぎる。
「あれ、以前(まえ)に島さんに聞いたんだよ」
「…何で航法の島さんが、飛行シムをそこまで知ってるんですよ?」
「古代さんが教えたに決まってるでしょ、そんな事」
    確かに、古代なら充分に在り得る。 ランダムに打ち込んでいて見付けた…のではなく、000000から順に打ち込んでいった…んだろう。きっと。
    そのくらいの根気と物好きさと、諦めの悪さは持ち合わせている人だ。
「…って。 君も大概、いい性格ですねえ?」
    …と、苦笑(わら)いもしないで突っ込んできた南部に、相原は。
「一番最初に『手痛く威(おど)かしておく』のは、常套でしょ。ヤマト乗員(ぼくたち)には」
こちらも真顔で、そう返した。
「ああ…最初の訓練ですか」
    それには確かに、嫌と言うほど身に憶えのある南部だった。

「大体、あれに関しては僕(ひと)の事言えないでしょ?南部?」
「…はい?」
    階段を降り掛けた所にその言葉で、南部は相原を振り仰いだ。
「最初の何回か…あのプログラム混ぜてたんだよね? ほら…サーシャに教えた時」
足の止まった南部に自然、並んで…追い越しながら。
「あの程度まで訓練進めてる学生でも、易々(やすやす)墜落(お)ちちゃうようなのを」
壁越しに相原が指差してみせるのは、さっきまで居た教室。
「あら、やだ。 ご存知だったんですか?」
    しかし…いけしゃあしゃあと、それに答えてしまう南部だ。
「レコード見てて、島さんが気付いたんだよ」
    レコードにはプログラムNo.…条件を打ち込んだのなら、その条件が記される。
「僕があのプログラム知ってるのは、その所為なのっ」
島がそのNo.まで正確に、記憶していたとは思い難いが。 そんなもの…やってみれば、すぐに分かる事だ。
「…教える気、無かった訳?」
「教える気は有ったけど、資格取得(と)らせるつもりが無かっただけ」
    今度は追い越した先で足を止めた相原に、逆に並んで…また追い越しながら、あっさりと。
「島さんは、まず無理だ…って言ってましたけどね。 だから俺は、その確実性を上げただけですよ」
そうして、振り返りもしないでとっとと降りて行った。

    さっきよりももっとはっきりと、色付いてきた空を眺めながら。
「サーシャにバレて、噛み付かれても知らないからね?」
「お嬢さんが怒っても、別段…怖くないですからねえ」
広い構内を、正門に向かって歩いて。
「参謀にバレちゃったら?」
「…お褒め戴けそうな気もしますが…」
    結果がどうあれ、教えた…というだけであれだけの騒動になったのだ。
「怒鳴り込んできたら、僕逃げるからねっ? 巻き込まないでよっ!?」
    そんな…過ぎた事で今更、もう一度巻き込まれるのは真っ平御免…な相原だった。

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Last Update:20050517
Tatsuki Mima