訓練学校にも、もう1年以上。
専科も目の前。
己の希望するが叶うにしても、ただ適性で振り分けられるにしても、そろそろ真剣に考えなければならない頃。
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はあ…と一つ、軽い溜息。
「悩まない奴は、良いよな」
どうした…と心配してやってみれば、そんな返答。
む…っとしながら古代が「何だよ」と島にまた返したのも、当然と言えば当然。
「だって…お前、全く悩まなかっただろう?」
こう返されて、言葉に詰まる。
両親の仇を討つ為だけに、ここまで来たような古代だ。
だから、将来を直接戦闘に関われない方向に選ぶつもりは、さらさら。
それも、こういう方面には極めて才能有った兄を見て良く知っているだけに、その進むべき方向を砲術以外に考えた事が本当に無かった。
つまり、島の言う通りに「専科をどうするか」と全く悩んだ事が無いからだ。
「…って、悩んでるのか?」
言外に籠(こ)めたのは「まだ」という言葉。
決定までにいま少しの時間の余裕は有るとは言え、本当に専科をどう選ぶのかまだ決めていない…と言うなら、それはいささか遅過ぎる。
もしも何処にも適性が無い…と言われたとすれば、なお問題。
まあ…あれだけの成績をトータルで出していて、全く適性が無いとは万が一にも言われないだろうが。
「悩んでるよ」
横に並んだ古代を振り返らないで、あっさりと答えて。
島はとっとと歩を進めて、隣を置き去りに。
悩まされているのは、自身の能力の有無でも適性の何処に在るか…でも無く、進むべき「この将来(さき)」。
何故なら、訓練学校(ここ)より未来(さき)を考えてここに居る訳では無かったから。
敵の存在に怒りを感じないとは言わない、現在の地球を憂える気持ちの無いとも言わない。
だが、そんなものと戦おうという強い意思有って訓練学校(ここ)に来た訳じゃない。
ただ…逃げ出したかっただけ、自分が1人になれるだろう場所(ところ)まで。
「ホントに羨ましいよ、お前が」
「…ああ?」
訳の分からないという感情を全く隠さないで、古代が間抜けた返答をしてきた。
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…分からなくて良い。
自分にだって、自分自身が分からないのだから。
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Last Update:20080719
Tatsuki Mima