相原ちゃんの脱走。

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相原ちゃんは、リレー衛星に辿り着けるはずが無い。

ヤマトの推進機関は、最速「光速の99%」という波動エンジンである。 通常の航行にはそれほどのスピードを出してないだろうが、所詮は機械推進艦である。 それなりの「人力では不可能な速度」で航行しているのは、間違い無い。
一方、重装宇宙服で出た相原ちゃんの場合。 推進力…と呼べるのは、姿勢制御用の小ノズルだけ…である。 後は、艦を離れる瞬間に「蹴る脚力」だけだ。

宇宙空間は一般的には「ほぼ真空」なので、摩擦係数(μ)もほぼゼロ。 摩擦が無ければ、推進力は完全に加速度に変換される。 計算上、摩擦による速度減衰が無い、近隣の恒星などの重力干渉も受けないとしておこう。
最初に艦を蹴った力が、最初の速度を決める。 そこから姿勢制御用のノズルを燃料の尽きるまで噴かし続ければ、(宇宙服のみの)人間としてはかなりの速度が出せるだろう。 速度減衰が無いので、燃料の尽きた時点の速度のまま移動し続ける事になる。

ヤマトの移動速度を10、相原ちゃんの最終的な移動速度を1としてみる。 まあ…実際にはそんな比ではないはずだが、分かりやすい所でそうしておく。
ヤマトは前方(イスカンダル方向)に10の速度で、相原ちゃんは後方(地球方向)に1の速度で進む訳だ。 簡単に考えると、10+1=11。 単位時間当たり11の速度で、ヤマトと相原ちゃんは離れていくように思われる(図1)。

だが、これは間違い。

相原ちゃんが「ヤマトを離れる直前」の事を、考えてみよう。
ヤマトは「相原ちゃんを乗せて」航行している…という事は、ヤマトも相原ちゃんも前方に10の速度で移動している訳だ(図2−1)。
慣性の法則によって、相原ちゃんには最初っから「前方に向かう、値10のベクトル」が掛かってる…という事を忘れてはいけない。 この状態から、相原ちゃんはヤマトを離れるのである。
前方10ベクトルと後方1ベクトルの差は、前方9ベクトル。 つまり、相原ちゃんはヤマトからは離れていっているが、全体としては前方に相当な速度で移動している…のだ(図2−2)。
ヤマトと相原ちゃんは、あくまでも単位時間辺り1の速度でしか離れていかない。

ヤマトを離れた相原ちゃんを、雪が私室の窓から「目視目撃」してる…という事は、それは離れた直後だったと思われる。 それを廊下で古代と島に伝えたのは、そのまた直後だろう。
居住区域(雪の私室近辺)から、第一艦橋までどれだけの時間が掛かるかはっきりはしないが。 島は即座に、ヤマトを停止させたはずだ。 停止まで、長く掛かっても1〜2分…という所だろう。
その程度の時間では、相原ちゃんはまださほど離れていないはずだ。 下手をすれば、レンジ最小・感度最大に切り替えたレーダーに、相原ちゃんの装備(宇宙服)が微細な反応を見せた可能性だって有る。
相原ちゃんが、仮に「完全にヤマトと真反対の方向」に飛び出したとすれば。 停止したヤマトの居場所に、大して間を置かず「戻って来る」事になるのだ。 それも、相当のスピードで。
少なくとも、高機動性・高速度を誇るコスモゼロやブラックタイガーの編隊で探しに出るほど、遠くには居ないはずである。 むしろその場合、意外に近くに居る相原ちゃんを「撥ね飛ば」さないか、そちらの方が心配だ。

実際の所は、摩擦係数はゼロでは無いし、ヤマトと相原ちゃんの間の「万有引力」の問題も有る。 恒星・惑星に較べれば微々たるものだが、質量の大きいヤマトに相原ちゃんは多少引き摺られる計算になる。
勿論、話の途中で無視したそれ以外の物体からの重力干渉も有る。
何にしても相原ちゃんは、リレー衛星にもたどり着けなければ。 それ以上のはるか後方の地球になど、何が有っても戻り付けない。

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Last Update:20050302
Tatsuki Mima