核融合反応に歯止めの効かなくなった太陽は、熱と光を遠慮無くその周囲に撒き散らしていた。
土星宙域。
元々、その太陽の熱を意識出来るほど近い距離にはない。
ただ…それでも、この距離から見る太陽は以前の記憶よりは、その光量は増しているような気がした。
その為か、太陽光を反射して輝く土星は…やはり記憶より明るいような気がした。
こんな時にでも、直接に逢える事は嬉しくて。
でも同時に…多分に、後ろめたさも感じないではなくて。
それは、晶子さんも同じようだった。
「古代艦長が、気を利かせてくれたんですよ」
それは嘘だ…と承知しながら、僕はそう言った。
他人の感情に関しては、古代さんは意外に良く気付く方だし、甘い。
自分の事になったら、全然…と言って良いくらい気付かないのに…特に、恋愛方面の事は呆れるくらいに。
だから、今言った事が全く嘘だとも言えないのだけれども。
そんな事だけで、古代さんが人選をしてしまわない事も、事実。
現に、ガルマン・ガミラス本星に停留中のヤマトには「通信班長」が不可欠なほどに、細かい調整や勘を要する通信は無い。
ヤマトとも地球とも、相対的にその座標を変化させ続けている工作船の方こそそんな作業が必須で、その為に僕が工作船に乗る事を命ぜられたのだから。
それでもそんな言葉で、晶子さんの後ろめたさが少しでも払拭されるのなら、まあ…良いかな…と思って。
だから予想に違わず、くすり…と笑ってくれた晶子さんの反応に、僕は正直ほ…っとして。
「太陽制御が成功すれば、ヤマトはすぐガルマンから帰って来る予定です」
「成功するわ、きっと…。
美しい地球が、滅びるはずがないわ」
その時は、まだ…この後の制御工作が不成功に終わるとは思っていなかったから。
誰も。
土星の反射光の射す部屋は、月光の下の地球を思い出させて。
「また…季節が、規則正しく廻って来るようになって。皆、将来の夢を語るようになるわ」
こんなに殺風景な部屋なのに、何だかとても特別な場所のようで。
「…私たちも…」
私たち…僕と晶子さんと、それぞれに?
それぞれの将来の夢を?
それとも…少しばかりは共通した、どこかで交錯する同じ将来を?
真田さんの声が、僕を呼んだ。
フラウスキー少佐が、長官に太陽制御工作の手順を説明し終えたんだな…と。
真田さんにしろ、フラウスキー少佐にしろ「科学者」としての弁の巧さが、この際ちょっと恨めしい。
「それじゃ…」
また、この次に逢えた時に。
その時には、はっきりと言葉で「好きだ」…と。
きっと。
「貴方のお帰りをお待ちしてます」
戻ります、地球に。
晶子さんの居る所に…僕は、必ず帰りますから。
◇
◇
◇
◇
その前も…あの後も。
たくさんの血が流されて、それだけの生命が失われて。
太陽が制御されて、地球は生き永らえる事が出来ると確定して。
僕は生き残っていて、ヤマトは地球に還る事が出来て。
失って戻らないものの重さに、ただ無邪気にはしゃぐ事は出来ないけれども。
それでも地球に…晶子さんが居ると認識している今回の帰還が、今まで一番嬉しいと感じている僕が居るのは…本当の事だった。
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Last Update:20121201
Tatsuki Mima