昨夜からの雪は静かに降り続いて、薄曇りの朝に、窓の外は一面の銀色だった。
流石に誰も、年末年始は仕事などしたくない。
それは…防衛軍とて同じ事で、何事も無い平時に、クリスマス辺りから…何となく、のんびりと。
実際、年明けまでは普段より少しだけ楽なシフトに休日も多くて、長期の休暇を取っている者も居て。
「積もったなあ…」
仕事の無い連中には楽しくても、出勤する方は堪(たま)ったもんじゃないぞ…と、窓の外を眺めながら。
出勤せねばならない守が、軽い溜息を一つ。
「ねえ。ねえっ、お父さまっ?
何、これっ?」
年頃の娘としては、とんでもないどたばたとした足音と共にリビングに駆け込んで来て。
サーシャは守の隣から、窓の外を指す。
「雪」
その様子に、少しばかり呆れながらも、守は取り付く島も無いくらい端的に。単純に。
「嘘ぉ、だって雪って…」
サーシャも、雪を見た事が無い訳じゃない。
流石にイカルスに居た1年間は無理だったが、地球に戻ってから毎冬何度も雪くらい降っている。
だが…確かに、積もっている所は…見た事が無かった。
ちらちらとしか降らずに、すぐに融けてしまって。
「長い時間、たくさん降れば…こんなもんだ」
いや…この辺りの緯度と高度からすれば、大雪で積もり過ぎなのだが。
真田は、昨晩から科学局に泊まり込んでいた。
…単に、帰宅するのが面倒だった…とも言うが。
そして、それが正解だった…と、窓の外を見て思っていた。
「また…積もったもんだな」
この積雪を理由に、何人が休むだろう…と、頭の中で計算しながら。
もっとも、クリスマスまでに今年中の仕事は実質的にはケリが付いているから、誰がどれだけ休もうと、あまり「真田には」関係無かったりするのだが。
今、真田が自主的に「残業」している状態なのは、正月くらいゆっくりさせてくれ…という言い訳を作ってるだけだ。
それにしても窓からの眺めが、ここまで銀一色だと…まるで別の街みたいだ…と。
そんな事も思っていた。
銀世界に惚れ惚れしている訳ではなく、色彩が無くて殺風景だ…と。
「さて…と、どうするかな…」
クラシカルに、手で雪を除(ど)けるか。
火炎放射器でも作って、融かして乾かしてしまうか。
つまりは、この雪の始末を。
まだ、わずかにアルコールの残っている頭でも、窓ガラス越しに見える空模様の割には、外が明るい事に気が付いてしまって。
「おや、まあ」
能天気な感嘆詞を発したのは、南部。
「帰れる…かなあ。
交通機関…動いてると思うか?」
今時の、ほぼ自動化されてしまった交通機関が、悪天候に弱い事を分かっているから。
つい、そんな事を訊ねてしまう太田。
「歩いて帰れば良いじゃない、大した雪じゃないし」
窓の外を確認した上で、驚いているらしい2人を不思議そうな顔で見ながら、相原がそう言って。
「…そりゃ…お前には、だろうが」
2人に、同時に突っ込まれてしまう。
元々のシフトが休みの太田と、年明け早々の出航まではお暇な南部に。
3人の中では、一番休暇の取りやすい相原が合わせて、何となく飲んでいた…その翌朝。
◇
◇
◇
◇
「…迷惑な…」
…と思うだけでなく、実際にも島は呟いてしまった。
帰還したばかりで、司令部への提出書類がまだ残っている。
この積雪に、日を改めれば良いようなものだが…こんな詰まらない事を、うっかり年越しさせたくも無い。
そんな訳で、まだ踏み固められていない歩きにくい足下を気にしながら、司令部に向かっている途上だ。
当たり前だが、学校は年末年始の休みに入っている。
そこらここらに、子供たちがはしゃいで走り廻っていた。
「…元気だな、子供って」
一固まりの集団をやり過ごしておいて、それと同じくらいの年齢の弟のはしゃぎようを想像して…つい、苦笑する。
何処も踏み固められていなくて、歩きにくいなら、何処を歩いても同じだ。
それならば、距離を稼いだ方が楽…になる。
普段なら通らない緑地帯を突っ切って行こう…と、島は考えてその通りにした。
この緑地帯にも幾つも足跡が残っていて、はしゃぐ何人か…の姿も見えている。
意外に、背の高い人影も幾つか見えていて。
「まあ…大人でも、珍しいだろうな。これくらい積もると…」
そういう島にだって、この街でこれほど積もった記憶は無い。
珍しげに、雪の積もった街を見ていたテレサを思い出して。
下手に融けて滑りやすくなる前に帰って、2人で外を歩いてみようかな…と、そんな事を。
しかし…そんな考えは、いきなり投げ付けられてしまった雪の塊(かたまり)に遮られてしまって。
投げてきたのは…古代だった。
さっき見掛けた「背の高い影」のうちの一つが、自分の友人だったか…と思うと、少しばかり情けないやら呆れるやら…。
「お前も、遊びに来た口か?」
しかも、多分初対面だろう子供たちを引き連れて。
…ガキ大将か…お前は。
年齢(とし)は、幾つだ?
「仕事だ、仕事」
そう言って、島が持っていたブリーフケースをわざわざ見せれば。
「お前なあ…何もわざわざ、こんな日に仕事しなくても良いだろ?」
古代は言っている間にも、子供たちに雪玉をぶつけられて、ぶつけ返していて。
「お前こそ…今更『雪』も見飽きただろうが」
アクセントの差から、言っている意味が分かったらしくて、思い切り島に雪玉を投げ付けてきた。
分かっていて当たってやるのも口惜(くや)しいから、ブリーフケースで叩(はた)き落とす。
「当たれよっ」
「誰がっ」
年齢を忘れて、子供たちと一緒にはしゃいでいる友人は見捨てて、さっさと仕事を終わらせよう…と向けた背中に、また投げ付けられて。
「お。やったぁ」
…しかも、それを嬉しそうにはしゃぐから。
「い…い加減にしろよっ、お前は…っ!」
足下の雪を掴んで、狙い違(たが)わず、古代の顔に投げ当てていた島だった。
「何、遊んでるんですか。2人とも」
ぼそぼそぼそ…と、歩いているのか走っているのか分からない速度で、南部が近付いて来て一言。
「遊んでないっ!」
滅多に出来ない方法で、まず怪我をする事が無いと分かっているから。
最近はやってない喧嘩を、少しばかり真剣にやっていた古代と島が、異口同音に答える。
…だが、傍目からすれば。
2人が、子供に交じって遊んでいるようにしか…見えない。
「…ま、良いですけどね」
ここは、逆らわないでおこう…と思った南部だ。
「お前らこそ、何やってるんだ?」
服に白く残った雪を叩き落としながら、南部の後ろから歩いて来る相原と太田を見付けて、島が問うた。
「俺と太田は、帰るとこです。
相原ん所から」
「…相原は?」
同じように雪を払いながら、今度は古代が問う。
「僕ですか?
僕は、2人を送ってってるだけです」
「…嘘ですよ」
相原に、まだ遅れてその場に辿り着いた太田が、少し上がった息で。
「はしゃいでるだけです、相原は」
と、きっぱりと言い捨てて。
「ああ…そうそう。
こいつ、妙に歩くの速いんですよ。
雪ん中」
「えー?僕、別に早くないよ?」
南部の暴露に、相原は否定したが。
聞かされた古代と島は、そうかも知れない…と思っていた。
◇
◇
◇
◇
お父さまが遊んでくれないなら、お義父さまよね。
…という至極簡単な理論に基(もとづ)いて、サーシャは科学局に向かっていた。
抜かり無く、電話を入れて居る事を確認してから…である。
途中で見掛けた、大きくは無い雪だるまや、何故か車の上に置かれてあった雪のウサギとか。
そういうものを珍しげに、たっぷりと眺めても来ながら。
「叔父さまーっ!?」
島や南部たちと同じ理由で、但し…向かう方角は違っていたが。
緑地帯を通り抜けようとして、サーシャは古代を見付けた。
いや…古代1人が、最初に島が見掛けた時のように、子供たちに紛れて遊んでいたのだったら、気付かなかったかも知れないが。
それ以外にも、見知った顔が在り過ぎて疑いようが無かったのだ。
ぼそぼそぼそ…と、南部と同じような速度で…但し、途中で1度転んで、ようやく傍まで辿り着く。
「何してるの?叔父さま?」
島が髪や肩を払ってやるのをそのままに、自分は服の前を叩きながら、サーシャが問う。
走って乱れた呼吸を、白く吐き出しながら。
「雪合戦」
まさか、島と喧嘩してました…とは言えないで、古代が黙っている間に何故か南部が答えてみたりする。
「雪合戦」と言われれば「雪合戦」だったから、あながち間違っているとも言えない。
「したいっ!」
サーシャの即答に、全員が「は?」と間抜けた答えを返してしまった。
「だってっ、した事ないんだもん。
したいっ」
言われてみれば、また全員がそうかも…と思う。
遊星爆弾に追われた地下都市にまで雪は降らなかったが、それでも全員が子供の頃に積もった雪で遊んだ経験くらいは有る。
反してサーシャは、イスカンダルに生まれてイカルスで育って、地球ではたった2回目の冬である。
相原を除いては、記憶に無いくらいに積もった雪だ。
早ければ明日にも消えてしまうのなら、サーシャの願望くらい叶えてやっても…悪くは無いだろう。
「何か…訓練学校の時の、模擬白兵戦思い出しません?」
「何でそっちに、戦闘班員が2人も揃うんですか」
妙に楽しそうな南部に、組分けが不服な太田。
「しかも、残りは雪慣れしてる相原だし…」
オーソドックスにじゃんけんで決めた組分けだから、狙った訳では無いのだが。
「サーシャが楽しめば、それで良いんだよ。太田」
島が当たり前の事のように、そう諭して。
「模擬白兵戦なら、連続28回『戦死』の記録持ってる古代だし」
その背中に、雪玉が一つ。
「お前だって、結構な連続記録持ってただろうがっ。島っ」
「俺は、連続24回までだ。
一緒にするな」
どっちも、どっちだよ…とは、3人の思う事。
「始める前から、無駄な体力使わないで下さいよ。古代さん」
南部が、言葉で割って入って。
「…本当に、そんな記録持ってるの?
叔父さまと島さん?」
問われて、うんうん…と太田は頷きながら。
「古代さんは1人で後先考えずに突っ走って行って、被弾。
航海長は、フォローに廻ってるうちに孤立して…ってのがパターンだった…かな?
1年目の時の話だけどね」
「…性格、出てるわねえ」
思わず納得してしまった、サーシャだった。
当たれば砕ける雪玉とは言え、握り固めようによってはそれなりに痛い。
敵対する側に廻ってしまった、古代にしろ、南部と相原にしろ、何となくサーシャに本気でぶつける気にはならない。
自然、そのとばっちりが島と太田の2人に、集中して掛かる事になる。
「…何をやってるんだ、お前らは…」
これから行く…と電話を掛けてきたなり、いつまで経っても現れないサーシャを捜しに、科学局の入口まで出た所で。
そこから見える緑地帯に、子供とは思えない図体の6人を見付けて…多分に、呆れながら寄って来た真田であった。
いや…問わずとも、見ていて分かってはいたが。
「来ると言ったら、寄り道してないで来い。澪」
「ごめんなさーい」
言われて舌を出しながらも、それなりに神妙にサーシャが謝る。
「俺は良いが…古代には謝っておけよ?」
噂をすれば、影。
「真田さん…お兄さんに、連絡したんですか?」
司令部方面から走って来る深緑色の長身の影に、島がそう問えば。
「あっちに行ってるかと思ったからな、最初は。
さっき、ここに居ると電話入れたんだ」
「…除雪車みたいですね、古代参謀…」
相原が、すごく的確な例えを。
◇
◇
◇
◇
「無駄な心配掛けさせるなっ!
俺は良くても、真田には…だっ!」
両方が似たような叱り方をする、父親2人だった。
「…ごめんなさい」
剣幕が違うから、流石に真田相手の時よりももっと神妙に。
「大体、何でこんな所で雪合戦になってるんだ」
睨(にら)む相手は、実弟とその友人と等分に、同等に。
「私がしたい…って言って、叔父さまたちが付き合ってくれたの」
それをサーシャが、精一杯に取り成す。
間違いでもなく、嘘でもない。
言われてみて、娘の朝の様子を思い出す守だった。
確かに…そういう経験は全く無い訳だ…と。
最初の1年に、成長が速過ぎる為に出来ない事が多過ぎた事を。
「まあ…そんな理由です」
本当の最初が、古代と自分の妙な喧嘩だとは言いにくい島だ。
「それにしても…加減が出来ないのか?お前らは」
近付いて来るまでの間だが、実際に様子を見ていた真田がぽつり…と。
「遊びのレベル、超えてるぞ?」
戦闘士官ばかりでないとは言え、現在軍籍を持つ6人だ。
訓練の結果の、元々の体力と持久力と判断力が一般人とは違う。
本気に…つまり、ムキになった時に手加減しろ…と言う方がかなり無理だ。
「いや…白兵戦訓練、思い出しちゃったもんで」
それには、南部が苦笑しながら答えた。
「雪上想定戦は、やった事無いんですけどね」
「…やらなかったのか?」
自分たちの時には一応有ったから、南部の言葉が意外だった守だ。
「俺たちの時って、地下(した)ですからね」
「雪なんて、降りも積もりもしなかったですもん」
太田が足下を指しながら答えて、それに相原が続ける。
娘だけでなく、弟たちの雪に対する感覚も違うんだ…と、改めて感じた守だった。
「続き…やっても良い?お父さま?」
両手を合わせて口元辺りに、わずかに首を傾(かし)げて。
娘の事情と、その「おねだりのポーズ」に返す言葉に詰まる、実父。
正直、まだやるのか?…と思う、最初に付き合っていた5人。
「…付き合おうか?」
苦笑しながら、そう返した義父。
「本当っ?お義父さまっ?」
嬉しそうなサーシャに、何となく。
「おい…真田…」
「こんな事くらいで喜ぶんなら、付き合ってやっても良いだろう?」
真田に、先を越されたようで結構口惜しい守だったりする。
「あーっ、もうっ!
俺も、付き合えば良いんだろうっ?
付き合えばっ!」
無邪気に喜ぶ、サーシャはさて置いて。
「真田さん…仕事は良いんですか?」
「兄さん…仕事は?」
島と古代、殆ど同時の当然の問いに。
「急いだ仕事は、無いからな」
と、真田が。
「やってられるかっ!」
…と、守が。
「仕事して下さいよ、古代参謀…」
同じ司令本部勤めで、後からとばっちりが来そうで嫌な相原が溜息を吐きながら、ぼそ…っと。
「うわ…ホントに、雪上想定白兵戦訓練になりそうで、やだな〜」
そんな南部の言葉も、冗談では済まなさそうな…。
◇
◇
◇
◇
…案の定、である。
最初からの6人はそのままで、サーシャが先に付き合う…と言ってしまった真田を、自陣に引っ張り込んでしまったから。
否応無く、守は古代の側に加わってしまって。
多分に、真田に対して妬いているから、最初っから遠慮の無い守に。
「こらーっ、島ーっ!
逃げてるんじゃないっ!!」
「逃げてませんっ!
非戦闘員の移送ですっ!」
早々に、サーシャを安全圏に連れ出した島だ。
初めの時から、古代たちがサーシャにあまり当てたくなかったらしいのは分かっているのだが。
手元が狂う場合も有るし、サーシャの方からわざわざ「当たりに来る」状態になる事だって在り得る。
その場合に、当ててしまった方には当然だが、島や太田にも「何故、庇(かば)えなかった」という守の叱責が来そうで…嫌だったのである。
見てるだけなんて詰まらない…というサーシャを、頼むから見てるだけにしてくれ…と無理矢理に言い包(くる)めて。
自陣側でなく、何故か敵陣側の守に急かされて、已(や)む無く島は戦線復帰した。
「何か…真田さん、集中的に狙われてません?」
そんな事には、太田が言うより先に気付いていたし。
「各個撃破するつもりなんだろう」
そう答える真田は涼しい顔をして、飛来する雪玉を的確に避けつつ。
かつ攻撃の手を休める訳ではなく、こちらも的確に。
「…司令塔を潰すつもりじゃないんですか?
指揮系統を潰すのも、セオリーですから」
と、真田に返しはしたが。
…絶対、お兄さんの嫉妬…を通り越して、私怨だろうな…と、内心思っていたりする島だった。
最初に戦線離脱したのは、相原。
「体力無いわねー、相原さん」
「僕が無いんじゃなくて、向こうが有り過ぎなのっ」
司令本部での内勤をやっている今でも、規定以上の訓練はこなしている。
こう見えても運動能力だの戦闘能力だのは、その辺りの戦闘士官を軽く越えていたりする。
「特に、古代参謀。
レベル…違い過ぎっ」
その…しかも雪に慣れてるはずの相原が、これだけ息が上がっているのだから、推(お)して知るべし。
「…そうなの?」
物心付いてから以降、参謀職に在る守しか見ていないから、サーシャには全く想像が付かない。
艦長職に在った事だとか、ちょっとばかり前の「占領下」でしっかりパルチザンしていたとか。
そんな話は、あくまでも聞いただけ…なのだから。
「でも…お義父さまと、対等に見えるけど?」
「どっちも、似たり寄ったりなレベルで、突き抜けてるんだってば…」
2人を、単純に較べた場合。
守は身体能力や戦闘能力が、真田の方は頭脳と器用さが、より勝(まさ)っているのは確かだが。
守の知力と真田の運動能力も、一般だの平均だの…というレベルは軽く超えていたりする。
普通じゃないレベルが、普通でしかないと思っていたら。
そりゃ…僕なんか、体力無い方に分類されちゃうよね…と、相原は自嘲気味に溜息を。
「…どっちが、強いの?」
「え…?」
そもそも、2人を較べよう…などと思った事が無いだけに、相原にとってはものすごく意外な質問で。
「えーと…」
単なる知能テスト、体力テストならば、どちらが勝つかなどという事は、一目瞭然だが。
総合的、複合的に…となると、どちらがどうとも言いがたい。
「…ごめん、分かりません」
「雪玉じゃないですよ、あの痛さって」
頭の雪を振り落としながら、太田が。
「どういう握り固め方してるんですか、古代参謀って」
「俺が知るかっ」
実弟と言えども、当人ではない以上。
そんな事、分かるはずが無い。
「それを言うなら、真田さんのだって石入ってるかって思うくらい痛かったんだぞ」
ぶつぶつと言いながら、古代が膝を払う。
「前から思ってたんだが、真田さんって結構コントロール良いんだよな」
持ったままは出来ないから、置いてあったブリーフケースを拾い上げながら、島がそう言えば。
「古代参謀の方は、質より量…な投げ方しますよねえ。
下手な鉄砲も、数撃ちゃ中(あた)る…って奴?」
眼鏡の歪みを、空に透かして見ながら南部がそう返す。
「お待たせーっ」
ぽそぽそぽそ…と、ビニール袋を手に相原が戻って来た。
「適当に買って来ましたけど、良いですよね?」
「遅いよ、相原君」
「甘くないの、どれだ?」
「俺、どれでも良い」
真田の投げたのをしっかりと避けて、即座に投げ付けながら。
「何、寛(くつろ)いでるんだっ!?お前らはーっ!!」
「…ついて行けませんよ。お兄さんと、真田さんには…」
そんな守の、半分八つ当たり的な問いには、島が正論を返して。
「俺たち『戦死』しましたんで、お気遣い無く」
南部がけらけらと笑いながら、手を振ってみせた。
◇
◇
◇
◇
「お父さまも、お義父さまも、頑張ってえっ」
娘の声援にうっかり応えてしまい、義父の雪玉をまともに顔面に喰らう実父。
「真田ーっ!そこ、動くなあっ!!」
「…で。
あの2人の一騎打ち…って、いつ終わるんだ?」
「サーシャが、ああやってチアガールしてる間は続くんじゃないんですか?」
「折角ホット買って来たのに、アイスコーヒーになりそう…」
「…凍る前には、止めるだろ…多分」
Special Thanks:光風ぷらむさん
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Last Update : 20040323
Tatsuki Mima