雪:02

NovelTop | 第三艦橋Top

    吹く風に軽く首を竦(すく)めて、襟を合わせる。 射す陽に、思わずほ…っと息を吐く。
    吐き出す自分の息の白さに、少しずつ冷めていく気温を目で知る。 暦はようやく冬となって、季節はわずかに秋の名残を見せて。
    枯れ落ちた葉も、人波に砕けて細かく散り舞って。

    もうすぐ、本当に寒い…冬が来る。

        ◇     ◇     ◇     ◇

「…寒いはずだよ」
    真上には青空、雲の切れ間からは陽さえ射していて。 それでも、風に寄せられて白いものがちらちらと降ってきていた。
    袖で受ければ、わずかに残って…それでも融けて。 手のひらに受ければ、ただ小さな水滴だけを残して。
    初雪の淡さ。
    君に逢いに行く、その道の途中。 つい…立ち止まって、真上を振り仰ぐ。 司会の中に、斜めに雪が降ってくる。 その風が、さっきまでより冷たく感じて。
    また一つ、小さく震えて。

    早く…君に逢いに行こう。 君に…温めてもらおう、この身体も心も。

    そしてまた、歩を進める。 降る雪に気付くまでより、ほんの少しだけ速く。 風の冷たさよりも、君に逢いたい…その気持ちで。
    雪は、まだ降っている。

        ◇     ◇     ◇     ◇

「…あ」
    目の前を、小さな白いものが過(よ)ぎっていく。 追えば、それが雪なのだと知れた。 寒いはずね…と呟きながら、受け止めようと手を差し出してみた。
    動かす手のひらに煽られて、雪はふわふわと腕を避けるように落ちていく。
    仰いでみた空は…明るく、いつまでも降り続きそうには無く。 地に落ちた雪は、ろくに跡さえ残さないままあっさりと消えていく。 これなら…きっと積もらない、貴方はきっと…いつも通りに。
    白く見えてしまう息を、軽く手に吐き掛けて、温めて。 足下から這い上がってくるような寒さを感じながら、貴方の来るのをここで待っている。

    1人で居る、今は…少し寒いような気がする。
    …でも、貴方にもうすぐ逢えるから、そうすれば…きっと。

        ◇     ◇     ◇     ◇

    一旦は降り止んで、また思い出したようにちらついている雪。 風が止まれば、陽射しは暖かさを感じさせてもくれる。 けれども、殆ど吹き止みは無く。
    約束の時間よりも早くから、待っていた君。 約束の時間までにはまだ少しを残して、辿り着いた貴方。 初雪と寒さを挨拶の代わりに口にして、どちらからともなく…手を繋ぎ合って。
「何処に行こうか?」
    そんな事さえ、これから決めようという2人。 逢いたいから、2人で居たいから。 何よりもそれが一番最初、場所なんて…何処だって構わないから。
    並んで歩く。 何でも無いような事を話題にして、どうでも良いような事に微笑い合いながら。

    繋いだ手のひらから、温かさが広がってくる。 2人で居る、それだけの事で…これほどまでに。
    肩の触れそうなほど、傍に居て。 たった、それだけの事で風の寒さまで気付けなくなる。

    ずっと…こうやって、歩いていけるよね。 これ以上に寒い日だって、雪に足を取られて歩きにくいような日だって有るだろうけれども。
    2人で、腕を組んで、傍に居て。 それなら…きっと温かく居られるよね、この心までも。
    強い北風が、真正面から吹き付ける日が有っても。 2人の間に、冷たい空気が流れ過ぎていかないように。 きつく…手を繋いで、寄り添って。

    冬は、これから。
    でも…いつまでもは続かないから。 少し過ごせば、また…春も来るから。

<< 01 | 03 >>

| <前頁
Last Update:20041001
Tatsuki Mima