吹く風に軽く首を竦(すく)めて、襟を合わせる。
射す陽に、思わずほ…っと息を吐く。
吐き出す自分の息の白さに、少しずつ冷めていく気温を目で知る。
暦はようやく冬となって、季節はわずかに秋の名残を見せて。
枯れ落ちた葉も、人波に砕けて細かく散り舞って。
もうすぐ、本当に寒い…冬が来る。
◇
◇
◇
◇
「…寒いはずだよ」
真上には青空、雲の切れ間からは陽さえ射していて。
それでも、風に寄せられて白いものがちらちらと降ってきていた。
袖で受ければ、わずかに残って…それでも融けて。
手のひらに受ければ、ただ小さな水滴だけを残して。
初雪の淡さ。
君に逢いに行く、その道の途中。
つい…立ち止まって、真上を振り仰ぐ。
司会の中に、斜めに雪が降ってくる。
その風が、さっきまでより冷たく感じて。
また一つ、小さく震えて。
早く…君に逢いに行こう。
君に…温めてもらおう、この身体も心も。
そしてまた、歩を進める。
降る雪に気付くまでより、ほんの少しだけ速く。
風の冷たさよりも、君に逢いたい…その気持ちで。
雪は、まだ降っている。
◇
◇
◇
◇
「…あ」
目の前を、小さな白いものが過(よ)ぎっていく。
追えば、それが雪なのだと知れた。
寒いはずね…と呟きながら、受け止めようと手を差し出してみた。
動かす手のひらに煽られて、雪はふわふわと腕を避けるように落ちていく。
仰いでみた空は…明るく、いつまでも降り続きそうには無く。
地に落ちた雪は、ろくに跡さえ残さないままあっさりと消えていく。
これなら…きっと積もらない、貴方はきっと…いつも通りに。
白く見えてしまう息を、軽く手に吐き掛けて、温めて。
足下から這い上がってくるような寒さを感じながら、貴方の来るのをここで待っている。
1人で居る、今は…少し寒いような気がする。
…でも、貴方にもうすぐ逢えるから、そうすれば…きっと。
◇
◇
◇
◇
一旦は降り止んで、また思い出したようにちらついている雪。
風が止まれば、陽射しは暖かさを感じさせてもくれる。
けれども、殆ど吹き止みは無く。
約束の時間よりも早くから、待っていた君。
約束の時間までにはまだ少しを残して、辿り着いた貴方。
初雪と寒さを挨拶の代わりに口にして、どちらからともなく…手を繋ぎ合って。
「何処に行こうか?」
そんな事さえ、これから決めようという2人。
逢いたいから、2人で居たいから。
何よりもそれが一番最初、場所なんて…何処だって構わないから。
並んで歩く。
何でも無いような事を話題にして、どうでも良いような事に微笑い合いながら。
繋いだ手のひらから、温かさが広がってくる。
2人で居る、それだけの事で…これほどまでに。
肩の触れそうなほど、傍に居て。
たった、それだけの事で風の寒さまで気付けなくなる。
ずっと…こうやって、歩いていけるよね。
これ以上に寒い日だって、雪に足を取られて歩きにくいような日だって有るだろうけれども。
2人で、腕を組んで、傍に居て。
それなら…きっと温かく居られるよね、この心までも。
強い北風が、真正面から吹き付ける日が有っても。
2人の間に、冷たい空気が流れ過ぎていかないように。
きつく…手を繋いで、寄り添って。
冬は、これから。
でも…いつまでもは続かないから。
少し過ごせば、また…春も来るから。
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Last Update:20041001
Tatsuki Mima