この部屋を訪ねてくる人は居ない、この部屋に帰ってくる人も他には居ない。
だから…確かめもしないでドアを開いた、それが…悪かった。
気付くのも遅かった。
その人ならドアチャイムなど鳴らす事無く、勝手にドアさえ開けてしまうはずだった事に。
そうして、一番…逢いたくなかったかも知れない人に逢ってしまった。
そうと見た瞬間に、ドアを閉ざしてしまえば良かったのかも知れない。
だが、意外な人の顔に驚いた事がそれを忘れてしまった。
そしてその人は、言葉に招き入れられてしまうまで外に待っていてくれるほど…大人でもなかったから。
願わず迎えた人を無碍(むげ)に追い払ってしまう言葉は、どうしても…出てこなかった。
◇
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◇
前触れ無く居なくなってしまった人の携帯に、電話を掛けまくってみた当日。
まだ信じ切れないで、心当たりにそれと無く声だけで訊ねてまくった、その翌日。
実際に、その姿を捜して走り廻ってみた、その翌々日。
そこまでを「家族」として同じ場所に一緒に暮らしていながら、その人の事を殆ど「何も知らなかった」事を改めて思い知らされた。
だって…その友人を1人だけしか知らない、その1人に連絡付かなければ他が出てこないほど。
慌てなくともいつか聞こえる…と現在の職場さえ聞いていなかった、それが何処に在るのか…もそこへの連絡の手段も。
そうして、現在(いま)何処に居るのか…全く知れなくて。
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Last Update:20070508
Tatsuki Mima