Ordinary:05

NovelTop | 第三艦橋Top

    誰もが、いずれは死んでしまう事が自然の理(ことわり)。 それがどれだけの未来(さき)でも、それとも…わずかに明日だったとしても。
    君が居なくなったら…と思ってしまえば、苦しい。 だけど、それ以上に君よりも先に俺が居なくなってしまったら…と思ったなら、なお苦しい。
「俺が…死んでも、はるかが居るから」
    どれだけの孤独を過ごしてきたと、知っている。 二度と独りにはしないから…とは誓えても、それを必ずの約束には出来ないから。
「はるかが、君に似ていれば似ているだけ、君に沿って生きてくれるだろう?」
    君がもし200年という時間(とき)を生きるなら、はるかは120年を生きてくれる。 君が…もし1000年という時代(とき)を生きるなら、はるかも800年を生きてくれるだろう…から。

    俺が、あと50年ばかりを生きて…終わっても。 それから以降(あと)を。

    再び静かだった、またしばらく。
「…でも、あの…悩みませんか?」
今度の口を切ったのは、テレサの方。 恐る恐る…と。
    今は良くても、この将来(さき)に。 自分が他人とは違うという事に気付けば、その時に。
    それが私のように、何もかも終わってしまって取り返しも付かないような事態(こと)には追い込まれる事無いとしても。 程度はどうでも、それが「孤独」である事には何も変わりないのだから。
    あんな思いなんて…私と同じような思いなんて、させたいと願うはずが無いのに。
「自分だけなんじゃないか…って思う事は、誰でも普通の事だよ」
    はるかだけじゃなく、君だけでも無く…俺も。 そう言われて、ほ…っとするのも一瞬だけ。 そう思うだけに終わらなかったのは、自分自身。 終わらないだろう…なのは、はるか。
「でも…!」
    …つい、随分とヒステリックに。 滅多な事では窓の外から意識を外さないはるかに、どうしたの…と訊かれてしまうほどに。
「自分だけが…って事は、俺にも有るよ?」
    その声を後部座席(うしろ)に聞いた島が、驚くほど静かに返してきた。

「君を選んだのは、俺だけだから」
    そうして、その事の為に…どれだけ悩みもしたから、と。

        ◇     ◇     ◇     ◇

「やー、もっと〜」
「駄目」
    短いドライブに、一度は不満を言ったがそれまで。 車内に置き去りにされそうな素振りに騙されて、慌てて座席から降りてくる。
    大人なら何でも無い段差を、一旦座り込んでから無理矢理滑り降りるようにしながら。
「…済みません」
「…何が?」
    駆け寄ってきたはるかを受け止めながら、テレサが。 まだ閉ざせるはずが無いその代わりに、島が後部座席のドアを閉めてしまいながら。
    何か言いたそうな、しかし…短い沈黙。
「いえ…何でも無いです」
それを切ったのは、微笑いながらのそんな言葉で。

    私が、地球に生まれなくて。 貴方と…違い過ぎていて。 そして、こんな私を…選ばせてしまって。
    そんな、色んな事に…ごめんなさい。

    だけど…ごめんなさい。
「あの…島さん?」
そんな何もかもを、全て引っ包めて…現在(いま)の私は幸せだと思うから。
「…今度は、何?」
    だから、あれこれの申し訳無さが有っても、きっと。 私のするべきは、それを謝する事では無くて。
「有難うございます」
自分を幸せにしてくれる人とものに、感謝する事。

        ◇     ◇     ◇     ◇

「何を…また、いきなり…?」
    そう言って苦笑した人の隣に、そっと寄って。
「好きです」
…とは、口のうちにひっそりと呟いて。

    …ええ。
    あの時から、現在(いま)も。 そうして…これからも、ずっと。

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Last Update:20060527
Tatsuki Mima