Simulation:04

NovelTop | 第三艦橋Top

おまけ:その3

    絶対に、何が在っても「実機なんて触らせてたまるかっ」…という実父の宣言があった為に。 どんなに頑張っても、サーシャが小型機のライセンスを取得する事は在り得なくなった。
「実害は無いんだから、飽きるまで好きに遊ばせておけ」
    …という義父の、無責任なのか…娘の性格が良く分かってるのか。 どちらなんだか…良く分からない言葉のお陰で。
「…いい加減、『死んじゃう』のにも飽きませんかねえ?」
「今度は着陸態勢まで、持ち込めたんだから良いじゃないっ」
「5回に1回くらい、滑走路上で『死んでる』だけでしょ? 未だに、生還率はゼロですよ?お嬢さん?」
サーシャがシミュレーター上で、飛ぼうが墜落しようがお構い無し…の沙汰にはなっていた。
    なので、相変わらずサーシャは飛び立っては…墜ち。 付き合ってる誰かは、呆れるか苦笑(わら)うか、溜息を吐くか…或いはその、全部で。
「も〜っ! いつになったら、ちゃんと飛べるのよっ!?」
「吠えてるようじゃ、当分は無理ですねえ」
    また、南部がけらけらと笑う。 そして…やっぱり、それがサーシャの癇に障る。
「…そのうち、絶対、飛ぶもん」
「はいはい。 是非、俺が死んじゃうより先にお願いしますよ?」

        ◇     ◇     ◇     ◇

    …そう言えば?
「他人(ひと)に言われて直るような事じゃないですからね。 自分で気付かないようじゃ、言っても無駄です。 島さんの言った通り」
    自分が未だにろくに飛べないで居る理由を、思い出したから訊ねてみたが。 元より、素直に教えてくれるような南部ではないと思っていた、その通りだった。
「…ケチ」
「何とでもどーぞ?」
    他人に教える事に関しては、何の考えも持っていない訳じゃない。 他人にどうこう言われて撤回するほど、底の浅い事でもない。
    島に訊いた時と、似たり寄ったりな南部の反応に。 これはしつこく訊ねても無駄そうだな…と、それに関してはサーシャもあっさり引き下がる。
    でも、もう一つ。
「『言っても無駄』ってのは、島さんにも言われたのよね。 南部さんが、あんなにギリギリまで付き合ってくれてた理由が分からないなら…って」
それを問うてみれば、今度こそ南部は…本気で呆れたらしくて、一瞬…黙って。
「気付いてなかった訳? そっちの理由なんて、簡単に分かりそうなもんでしょ?」
「分かってたら、訊かないわよっ」
    …それは、確かに。

    はあ…と、溜息を一つ。
「賭けてたんですよ」
それでも、思い直したように苦笑しながら。
「出航前に…相原が原因で、参謀にバレると踏んでましたからねえ。俺は」
    だから、ギリギリまでお付き合いしてたんですよ。 どうせなら、目の前で見たいでしょ? そんな面白そうな事…と、さら…っと。
「あ、勿論。 今回も、しっかり賭けてますから」

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Last Update:20050119
Tatsuki Mima