テレサにとっての、島。

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恐らく、「許し」だったんじゃないかと。
自分の「過去」を知った上で、それでも「愛してくれる男」はテレサの「蜘蛛の糸」だったんじゃないかと。

テレザートでのテレサの「孤独」は、テレサ自身の選んだ道だ。
その意思は無かったとは言え、自分の棲む惑星を、そこに生きる人々を殺してしまったのは、テレサにとって「最大の罪」だったのだろう。 だから、他の星に移動出来るのにもかかわらず、敢えて死せる星にそのまま留まり、
「私は二度と、自分の力を使わない」
…と自分自身を律し、罰し続けてきたのだ。
一人で居たのは、何も孤独が好きだった訳ではない。 独りである事を厭いつつ、それを罰だと思って過ごしてきたのだ。
だから、外界に興味が無い訳ではなかった。 いまだ遠い位置に有った白色彗星の存在も気付いていたし、通信装置も壊してはいなかった。

白色彗星が、単なる巨大な彗星であって。 その「自然現象」によってテレザートが消滅するのならば、テレサはそれを甘んじて受けただろう。 彼女にとっては、それもまた「罰」の一つでしかないからだ。
「たった一人で、死んでいく」
それは、テレサにとって当然の「罰」だったのだ。
だが、テレサは白色彗星に恐らく「自分の能力と同じ(もしくは、それ以上)の危なさ」を見たのだろう。 だから、あの「メッセージ」を送った。 …自分は何の力も揮わず、ただ「中立という名の傍観」に徹しようと、その時から決心していながら。 メッセージに応えて来た、心ある者たちに「卑怯だ、身勝手だ」と思われる事も承知の上で。

テレサは、多分…気付いていなかった。 自分のメッセージに応える者が存在したら、それは随分と久し振りに「他人に逢う」事になるのだという事に。 孤独には慣れたが、孤独を楽しんでいた訳でない自分の心が、自然とその「誰か」を求めてしまう事に。
それがヤマトであり、島だった。 彼らは知らない…白色彗星の実態も、テレサ自身の事も。 自分が何を伝えようとしているのか知らず、自分自身の「罪」も知らず。 航路を指定して、戻って来た島の言葉。
「有難う、テレサ」
…という謝辞に、テレサは罪悪感を感じては居なかっただろうか?
これから「白色彗星を止めろ」と告げるのに、自分は何もしない…という後ろめたさは、自分を律する自分の決心とは別に育っては居なかっただろうか?

自分自身を理解して欲しい…これは孤独でないと思わない事。 他人と関わっていたならば、その多少と正誤はともかく「他人に理解」されているからだ。 その相手に選んだのは、島だった。
まあ…テレサにとって、唯一「名を知っている」ヤマト側の人間だ。 声を聞き続けて、会話を交わして、唯一「知人」と言えるのは、島しか居なかったのだ。
ここでの「理解」は、知識として「自分の過去の罪」を知って欲しかっただけだろう。 それを知ってもらった上で「愛してもらおう」などとは、微塵も考えていなかっただろう。 この時テレサは既に、島に対して恋情を持っていたかも知れない。 …が、それが潰える事を承知の上で、ただ「知って欲しかった」のだろう。
何故なら、後4日で黙っていてもテレザートは白色彗星に飲み込まれて消える。 その時にはまだ、白色彗星に対峙しようなどとは考えてもなく、静かに死んでいくつもりだっただろう。 だから、ただ自分がどうやって生きて、罪を犯して、死んでいったか。 誰かに記憶しておいて欲しかっただけだろう。

テレサにとって意外だったのは、あの会話の中で島が、自分に対して「友情以上」の感情を持っていてくれた事だろう。 それは島に、彼女の期待以上の「理解」をもたらした。
「貴女自身が、白色彗星に対して、その力を…」
島のこの言葉は、テレサの決心には沿わぬ事でも、テレサにとってその能力を初めて「肯定的に認め」てもらったのではないか?
だからこそ、ヤマトには行かない、この星を離れないと言いながら、島が還るのを怖れたのだ。 島がヤマトに戻る…地球に還るという事は、自分を知って「否定しない」人間を目の前から失うのだから。 そして…一旦諦めて帰した島を、再び呼んでしまう。 その感情だけで。

自分には「罪」がある。 だから、ここを離れる訳にはいかない。 しかし、独りを嫌って一人の男に逢いたいと願う自分が居る。
直接には、島は一言も言っていない。 「君が好きだ、必要だ」…とは。 ただ、感じただけだ。
「自分の過去も、その罪も知った上でなお、自分を愛してくれている男が居る」
のだと。
それは「孤独な罪人」にとって「救い」以外の何物だっただろう?

だからテレサは、そのたった一人の男の為に「自分の全て」を捨てたのだ。 戒めも、能力も、その生命も。

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Last Update : 20031201
Tatsuki Mima