Growing up:02

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    どうせ死んじまうんなら、せめて一花咲かせてから。
    どうせ負けちまうんなら、せめて一矢報いてから。

    正直な所、絶対に敵を倒してみせる…とか、必ず勝ってやろう…とか。 そんな楽観的に過ぎる「抱負」抱えて、訓練学校(ここ)に来た訳じゃないんだよね。
    だって…冷静に考えて、既に地下(ここ)まで追い込まれてるものが、どうやって引っ繰り返るって? もう、こうなったら「本拠地防衛戦」じゃなくて「篭城戦」だもんな。 古今東西、篭城戦ってのは「敗北の時期を遅らせる」程度の意味しか無いんだよ。
    討って出た艦隊が、太陽系辺りで負ける…って事は、地球の資源を「宇宙に捨ててる」訳だし。 それが尽きちまえば、戦いようも護りようも無くなって、どの道倒れるしかないだろ?
    …な事言ってても、俺は別に聖人君子じゃないから「座して死を待つ」なんて悟れないし。かと言って、神様でもないんで「奇跡」も起こせない。 普通の人間に出来る事なんて、たかが知れてる。
    死にたくないよ…と、じたばた悪足掻きを見せる事。 あ〜あ、人間らしいよなあ…俺って。
    それで運良く死なないで、万が一勝ち続けられたら…それはそれで、生き残れる…って事で良いんじゃねえの?

    入学してから、周りを見廻せば。
「皆、変に焦ってるなぁ」
…というのが、実際の所。 俺にしてみれば、何でこんなに焦ってるのか…が分からない。
「暢気だな、お前は」
    入学早々から、同期の何人かに直接言われた言葉。 …という事は、口にはしないけど…という人数は、恐らくその数倍は。
「必死になるのは、卒業してからで充分だろ?」
そう答えれば、殆どは呆れたような顔をして。
    別に、他人様に俺の考えを押し付ける気は無いんで、特に弁明しないけどね。 一矢報いたきゃ、憶えなきゃならない事を憶えとかないと、役に立たないどころか足手纏い。 役立たずのうちは「暢気」で結構、今から必死になってても疲れるだけ。
    焦燥感を持つのと、実際に焦ってしまうのは違う気がする。 真剣である事と、深刻そうに構える事は違うと思う。
    階段は一つずつ昇って行かなきゃ、そのうち足を踏み外して墜ちるだけ。 訓練の足りないうちに戦って死んでも、それは「戦死」じゃなくて単なる無駄死に。 本気で「勝つ」つもりなら、それなりの準備や根回しは必要だよな。
    …余裕持って、ね。

    まあ、俺は俺で「暢気」に行かせてもらおう。
    今は「戦う」事より「戦えるようになる」事の方が、何より大事なんだし。 物事には何でも、順番ってモノが有るだろ? 戦って「勝」たなきゃ生き残れないなら、せいぜい「勝てる」ようになって生き延びてみせるさ。
    悪足掻きって、そんなもんだよな。

        ◇     ◇     ◇     ◇

    そう言えば、訓練学校での南部って、妙に「浮いてた」よな。
    他に較べて、必死さが無かったんだよな。 いや…無かったってより、見えなかったって方が正しいのか?

    えぇ? 何言ってんだよ。
    ホントにお前って、何にも努力なんかしてないように見えてたんだぞ。 そのくせ妙に、成績だけはしっかり残すし。 ほら、基礎過程最初のフライト・シム。 お前、あれ、俺よか成績良かったじゃねえかっ。
    あぁ? 誰が忘れるかよっ! すっげえ悔しかったんだからな、アレ。

    …そうそう。 お前の「家」の事が、知れちまってさぁ。
「卒業(で)ても、どうせ跡を継ぐから」
とか、
「後方(うえ)に廻って、前線(まえ)に出やしないから」
とか、散々言われてたもんな。
    …分かってるって。 お前の親父さんが、それほど「親馬鹿」じゃないってのも、お前が本っ当に「放蕩息子」だってのも、もうとっくに。

    痛ぇなぁっ!
    「放蕩息子」で悪けりゃ、馬鹿息子でもドラ息子でも、好きなもん選ばせてやるよっ!

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Last Update : 20040110
Tatsuki Mima