母の日の最初と言われているのは1907年、それに倣うように父の日の最初は1910年とされている。
米国で祝日と制定されたのは、それぞれ1914年と1972年。
「スタート」はほぼ同時なのに、カレンダーにそうと印刷されるようになったのには60年もの差が有って。
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御年、3歳2ヶ月。
生まれてこの方、4回目の母の日。
…と言っても、最初の2回は完全に記憶には無いはずだが。
「作った〜」
たまに地上に居る時くらいしか出来ない「お迎え」に行けば、駆け寄ってくるなり見てもらう為に突き出してきたのは、元は「赤い折り紙」だったらしい…紙ゴミ?
ギザギザで、くしゃくしゃで、よれよれ。
作った…と言うよりは、作ろうと思ったが失敗した…と言った方がよっぽど正しそうだ。
だが、可愛い娘にそれをはっきり指摘するほど、古代も馬鹿では無い。
正確にはそういう素直で馬鹿っ正直な指摘は、婚約時代に「雪に対して」散々やらかして…引っ叩かれもした、泣かれもしたので、流石に賢くもなっただけだ。
「…何だ?」
だが、分からないものは分からないので、素直に訊いてみる。
「えーと、ねえ。
えーとぉ…」
問われて弥生は、何度か「えーと」を繰り返した後で。
「お花っ」
どうしてもその「花の名前」が思い出せなかったようで、自信満々に極めて包括的な名称に逃げた。
「花?」
「お花。
ママにあげるって」
それでやっと、古代にも何だか知れた。
母の日のカーネーションだ。
何かしらを期待しているらしい、じーっと見上げてくる瞳に気付いて、綺麗に作ったね…と慌てて誉めた。
例によって、雪は随分と遅い時間に戻ってきた。
なので、弥生はとっくに夢の中…である。
「え?本当?」
だから、寝る前にしつこくお願いされた通りに、古代から雪に手渡した。
多分、まだ本当の意味は分かっていなくて、言われたからその通りに作って渡してきただけだろう。
角を揃えて折る事も出来ない、ハサミも上手く使えないから、見た目もこんなザマだ。
「やだ、嬉しい」
だが、それを貰ってしまう側の雪としては、出来の悪さなんて目に入らない。
だって…これが、初めて貰うカーネーションだ。
「…何か、ずるいよな。
母親って、さあ」
言葉通りに嬉しがっている雪の横で、その興も冷めるような事をぼそ…っと。
「最初に喋るのは『ママ』だしさ。
それに…」
その後、良くそれだけ言う事が有ったわね…と雪が呆れるほど、古代は面白く無さそうな顔をして腕組みしたままで延々と、ぶつぶつと。
「なぁに?進さん…拗ねてるの?」
呆れ過ぎて…おかしくて、くすくすと笑いながら。
「母の日だから…よ。
それも意味も良く分かってないわよ、きっと」
状況が特別なんだ…と、もしかしなくとも奥さまより娘の方が可愛くて仕方無い…のに今日は振られた旦那さまを、せいぜい宥めすかす。
「来月には、父の日だって有るわよ?」
隣にすとん…と座り込んで、下から覗き込むように。
やだ、ホントに拗ねてるわ…と改めて間近に見た表情に、また苦笑が止められない。
「…父の日って何だよ?」
「何…って、何の事?」
「花。
母の日の方は、カーネーションだろ?」
何を言うかと思えば…と、やっぱり苦笑。
花なんて特に興味も無い、本当はどうでも良いくせに、自分には貰えない…という事はそれもそれで面白くないようだ。
「…バラよ」
カーネーションよりは「値段が高い」わよ…と付け足せば、それで少しばかりはご機嫌が戻ったらしい。
そんな様子の古代を、横目に見ながら。
来月にはバラを買って、弥生から渡してもらわなきゃ…とこっそり決心する雪だった。
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でも。
「『娘の父親』って、皆こんな感じなのかしら?」
…と、雪にとって「父親」と言えば第一には勿論、実際の父親。
良く可愛がってもらったという記憶は、勿論在るけれども。
母親とのやり取りは思い返してみても…そんな事あったかしら、と首を傾げるばかり。
娘から見た父親と、母親から見た父親で違うのかも…とも考えたりしたが。
生憎と、雪の「旦那さま」は後にも先にも古代しか居ないから、比較対象が無い。
…ちょっとだけ、余所様の家庭の様子の気になった雪である。
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Last Update:20060404
Tatsuki Mima