雨の降る、夜は嫌い。
星が見えないから。
そこに居るはずの人との距離が、晴れた夜よりも遠くなったような気がするから。
ねえ…今、何処に居るの?
今、何をしているの?
無事で居ますように。
そんな思いを、見えない星空に念じてみる。
あの人に届くかしら?
届けば良いわね、ほんの少しでも。
行って欲しくない、本当は傍に居て欲しい。
だけど、行くな…とは言わない。
星空(そこ)が好きなんだ…と分かっているから、言えばあの人を悩ませるだけだと分かっているから。
だから、ちゃんと帰還(かえ)ってきて、ここに。
待っている私の所に。
◇
◇
◇
◇
雨の降る、休日が好き。
貴方と一日中一緒に居られるから。
面倒さに何処にも出掛けたりしないで、ただのんびりと。
同じ部屋の中で、時々どうでも良いような他愛無い会話をして、時間だけが過ぎていく。
そんな時間が、ものすごく幸せだと思うから。
読み飽きた雑誌のページをめくって、お茶を淹れて。
点けっ放したテレビは誰も見ていない、雨音を誤魔化す為だけの雑音。
くすくす…と額突き合わせて微笑って、ちょっとふざけ合って。
視線を交わして、心を沿わせて。
唇に触れてみて、肌を合わせて。
詰まらなくないか…と、気遣わしげに貴方が問うてくる。
この雨に、何処に出掛ける事も出来なくて、何をする事も出来なくて…と。
…馬鹿ね。
私の傍に、貴方が居てくれる。
私にとって、これ以上の楽しい事が何処に在ると言うの?
でも、言ってあげない。
貴方に夢中な自分が…口惜しいから、貴方には。
◇
◇
◇
◇
雨の降る、出航の日が嫌い。
見送る艦影が、距離に見えなくなるのではなく、雲に隠れて見えなくなってしまうから。
邪魔しないで。
地上に取り残される自分が、いつも以上に哀しくなるから。
いつだって…私は、大人しく地上(ここ)に待っているじゃない。
寂しいと思う気持ちを心の底に押し沈めて、微笑ってあの人を送り出しているじゃない。
だから…せめて、見送るくらいは好きにさせてよ。
ああ…ほら、こんな日は。
歩く私の足が水溜りを跳ね上げて、気持ちを引き立てるつもりで選んだ明るい色の服の裾まで汚していくわ。
私より先に、泣き出したりなんかしないで。
泣きたいのは…私の方よ。
◇
◇
◇
◇
夜の窓を、激しく叩く雨の音が好き。
何だか怖いわ…と、貴方の腕にしがみ付いてみる言い訳を作ってくれるから。
怖い…と思うのは、本当よ。
嘘じゃないわ。
でも…本当は、貴方にしがみ付いて震えるほどには怖くも無いの。
私はそこまで弱くも無い、可愛げの無いようにも思うけど。
ただ、ね。
近くに居たいの、貴方の近くに。
触れ合う距離に、それ以上…貴方の内側に。
…ねえ?
私は、貴方の心の中に棲み着いているの?
貴方の心の中のどれだけを、私は占めているの?
私の心の中には、貴方だけで一杯よ?
大丈夫だよ。
──違うわ…馬鹿ね、私の言って欲しいのはそんな言葉じゃないのよ。
ほら、傍に居るだろう?
──そうね、そう言って欲しかったのよ。
何、笑ってるんだよ。
──笑ってないわ、安心しただけよ。
◇
◇
◇
◇
雨は嫌い、貴方が居ないなら。
雨が好き、貴方と居られるなら。
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Last Update:20070502
Tatsuki Mima