散々に惑った、時空。
君と僕を映すばかりの、硝子(ガラス)と鏡の迷宮。
それでもようやく、その出口を見付けたから。
そこから漏れ射(さ)し込む、外部(そと)の光に気付けたから。
◇
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◇
◇
本当に…どうしようもなく絶対に、必要なものなんて。
そうは持っていないものなんだな…と、今更ながらに気付かされてしまった。
どれもこれも、きっと捨てられないと思っていた。
この先もずっと、自分にとって必要なものなのだと思っていた。
その全てに、それぞれに、何らかの思い出と想いが有るから。
航海に出る時、必要最低限の荷物で乗り込んでしまえるように。
殆ど…何も持たなくとも、自分が「家」を出られるのだと。
本当に…今更。
まだ、家具の全く無い部屋。
その中に、わずかに自分が今日持ち込んだものは。
今は手に入りにくいだろう、少しばかり古い航法の本が数冊だけ。
後は…今からでも、これからでも簡単に手に入れられてしまうだろうから。
ざっと見渡す、過ぎる殺風景。
がらん…として、まだ何も無い。
君さえ居ない、寒々しいだけの部屋。
自分1人の呼吸の音さえ、反射して大きく響きそうなほどに。
たくさんなんて求めない、少しだけ有れば良い。
君が…ここに「戻る」までに。
あと少しばかりの時間に、もう少しだけこの部屋を調(ととの)えよう。
戻って来た君が、今と同じ寒々しさを感じないで済む程度までには。
僕も、君も。
まだ慣れない「これから」に、きっと…途惑わないでは居られないから。
それでも、君にだけは。
あの惑星(ほし)で抱えていた想いなど、もう二度と感じて欲しくなど無いから。
今は要らない、それ以上…なんて。
一度は、見失ったはずのものがまた、身近に在る。
一度は、何もかも失くしてしまったはずの、そうだとしか信じられなかった自分にとって。
それ以上の幸いなど、一体…何処に在る、と?
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Last Update:20040806
Tatsuki Mima