…触れては、また…離れていく唇。
幾度も、そればかりを繰り返す。
あの日の、約束の部屋に…それはまた重ねての、無言の約束。
抱かれたまま…抱いたままで。
◇
◇
◇
◇
変わらず、耳元に…至極間近に聴く呼吸。
滑らせていく指に、触れる…少しばかり速い鼓動。
どちらも規則正しく、間違い無く。
生きていてくれて、この腕の中に在る。
そんな事さえ、確かめるまでは分からないで居る、愚かしさ。
繰り返される言葉も、ただ一度触れる事に敵わない。
そんな事にまで、なかなか気付けないでいた、それもまた…愚かしさ。
「ずっと、傍に居る」
それをまた、言葉にではなく…唇にして。
ほら…世界が、静かに壊れていく。
闇の中に眼を塞がれて、触れているものの存在だけしか確認出来なくなるように。
塞いだ耳に、自身の鼓動しか確認出来なくなるように。
この意識の中に、2人だけ…しか居なくなる。
何も要らない、他に…自分さえ。
ただ…何よりも大切で、何にも増して愛しい人が無事に在ってくれて。
それ以外に何も望まないから、それで良い。
その上に…自分も、その存在を許されて、その愛しい人の傍に居る事が叶って。
それ以上に、有難い事なんて…きっと無いから。
◇
◇
◇
◇
距離の無い、距離。
遮(さえぎ)るものは何も無く、空気さえ隔てず。
これ以上に無く、傍…に居る。
身体は、触れて…寄り添って…抱き締めて。
想いは、まだそれよりも強く…傍に居て。
感覚まで共有出来てしまいそうなほど、傍に…一つに。
◇
◇
◇
◇
そんな間にも、時間(とき)は確かに移ろっていく。
▲ |
<前頁
Last Update:20040830
Tatsuki Mima