貴女は今、幸せですか?
…はい、幸せ…だと思います。
──でも…私が幸せでいて、それで良いんでしょうか?
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人の声のさざめきが、争う爆音に取って代わって。
賑やかだった街も、今や漠々とした荒涼。
緑も水も、街の灯りも消え去った後には、ただ…吹き狂う風の音だけ。
そんな風景が、私の「造った」世界。
私が、この…呪わしい世界の創造主。
…そう。
累々たる屍と、積み重なって転がる瓦礫と。
破壊と殺戮という名の力を揮(ふる)うたその結果が、現在(いま)ここに在る景色だから。
…違う。
何を生み出す事も無いまま、壊していくしか出来ない事を、誰が「創造」などと呼ぶ?
だから…違うわ。こんなつもりでは無かったのに。
私は…ただ、争いを見たくなかっただけ。
それを…ただ、止むようにと願っただけ。
失われる生命と、崩れ落ちていく建築を惜しんで。
以前(むかし)を懐かしく、戦争(いま)を嘆いただけ…のはずだったのに。
何故…私だけが、ここに在る?
…呪われてしまえば良い。こんな私など。
死者の恨みがもしも人を殺すなら、私は疾(と)うに死んでしまえているだろうなのに。
そうでは無い、その事が…口惜しいほど。
…そして、今また。彗星までもが消えていく。
一度見失って、手離して。
そして、知らぬ間にもう一度を失ってしまいそうに。
それだから…怖い、また失ってしまう事が。
既にこの手の中に在るものも、これから…この手に掴むだろうものも、どちらも全てを。
まだ、この腕の中に抱いてもいないものを、失ったらどうすれば良い…と困惑するなんて、何て馬鹿馬鹿しい…と自分自身でさえ思うのに。
それでも、持てるものが増えれば、失くすものも増えるから。
それならば…いっそ、何も望まない。
失ってしまうかも知れないと怯えるくらいならば、手に入らない事を羨む方がもっと…ずっと楽だろうと思うから。
いや…失くす事よりも、きっと。
護りたいと思うものを、護れないまま終わる事の方が怖いから。
とても。
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貴方の一番大切な人は、幸せですか?
…そうであれば良い、と願います。
だけど…それはこの身の希望であって、本当がどうなのか…は分からないから。
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Last Update:20060126
Tatsuki Mima